なにか書きたい。

30代になっても自由に、思いのままに、なにか書いています。

山火事を起こしかけた日のこと。1

 

 

みなさん、こんにちは。

本日も元気に野山の手入れをしに行きます、私です。

 

山仕事をする私を見て、祖母が「なっちゃんは都会育ちなのに、百姓んとこにもお嫁に行けそう」と言っていたけど、最近は「大百姓んとこにもお嫁に行けそう」にグレードアップしました。

 

お、大百姓…

 

なんかスゴイ…すごいでかい畑持ってそう。

なんか知らんけどやったぜ。笑

 

 

山火事を起こしかけた日、私は山の斜面にあったカラカラに乾いた草を、山のふもとに下ろす作業をしていました。

 

もうさ、すごいのよ山って。草の量が。(それが山)

しかもうちの裏山はサラサラの草ばかりが生えてるんじゃない。

 

大鎌を振り下ろしても「ッ…ビーン!」みたいにびくともしないような、尋常じゃないほどパワフルな茎を持った笹の葉(その背丈2メートル超)みたいなのがあたり一面ビッシリ生えていて、手入れが行き届かなくなってから何年、何十年と経っているために、そのパワフル笹の上には細かいトゲがたくさんある蔓植物が分厚く乗っかっているのだ。(とてもコワイ)

 

その山の敷地面積の広いこと広いこと…

どこもめちゃくちゃ急斜面だしさ…(それが山)

 

広大で急斜面だらけの敷地を、母と伯母の2人で、草刈り機で切っていってもらうのだが(機械は危険なので私はまだ使わせてもらえない)、草刈り機でもなかなか切れない強靭さな上に、すぐに蔓が絡まってなかなか切り進めない。さらに背の高い草の根本には、何年前に切ったものなのか、枯れた笹がびっしり横たわっており、それも邪魔をしてなかなか切り進めない。(まさに地獄)

 

これまでは母が実家に帰ったときに細々と作業していたのだが、伯母も草刈り機を使えるようになった今年は、ここで、みんなで力を合わせて、一度みな切ってしまおう!さすれば来年からは手入れがずーーっと楽になるぞ!ということで、前回の帰省時も、今回も、3人で来る日も来る日も山仕事をしていたのです。

 

…うちの裏山がどんな最強ボーボー山かっていう前置きが長くなったわ…笑

 

でね、農作業の一環で、この辺の地域では、刈った草を自分の敷地で焼いていいことになっているの。だけど、草を刈った直後はまだ青々としているから、しばらく切ったまま天日干しにして、乾いてから燃やすの。

 

山火事を起こしかけた日、私は数日前に伯母が切っておいてくれた草を、山のふもとへ下ろす作業をしていました。

前回の滞在中、最後の最後で私が苦労して蔓をひっぱり下ろしておいた一帯。そのあとの草を伯母が一人で切ってくれていたのです。

 

草刈り機では切れなかった崖っぷちの草を鎌で切りながら、崖下へ乾いた草を落としていく。これをキレイに落として焼いておかないと、その上からまた草が生えてきて、次に草を刈るときに大変だからね…

 

 

その日、母とは「斜面の草を全部下ろして、こんもりまとめて、あとで焼こうね」という話になっており、母は別の場所の草刈りを始めていました。

 

伯母は朝イチで入院していた祖父を迎えに行っていました。

帰ってきたときに皆でお茶をして、そのあとはすぐに作業再開。

 

私はまた崖っぷちでの作業。

しばらくすると、作業している側とは別の崖向こうで煙が上がりました。

あれ?伯母が何かを焼いてるなぁ…。

 

草を燃やすときは、こんもりまとめて積んでから燃やすんだけど、私が作業を再開するのに山を登ったときには、まだ何も積まれてないように見えたので、そのときは(何か燃やすものがあったのかな?)と思いながら作業していました。

 

すると今度は作業していた崖のすぐ下から火の手が上がり、伯母が「なっちゃん、下で火をつけたからね、気をつけて」と言いました。

 

(…あれ、下には落とした枯れ草がたくさんあったはずだけど、おばちゃんもう草をまとめたのかな?かき集めるような音、聞こえなかったなぁ…)

 

そう思っているうちにものすごい炎が上がり、私が作業していた場所は火の真下ではなかったのに、熱くてその場にいられず、すぐに崖から山の上へよじ登りました。

 

振り返ると、ものすごい炎の頭が崖下から見えていて、崖っぷちのあたりにも小さな火が点々とついていました。

 

(もしかしておばちゃん、山肌にある草も一緒に焼こうと思っているのかな…?)

 

崖の突端には私のお気に入りの、大きなクヌギの木。

燃えないかな、大丈夫かな…

 

そんなことを考えていた数秒間。

ふと見ると、伯母が血相を変えて山を駆け上がって来ていました。

 

(あっ、やっぱり山肌に火が回ったらダメなんだ!)

 

私はそこでようやく、燃え上がった草が伯母の意図していない燃え方をしているのだと気が付きました。

崖に点々とついた火は、みるみるうちに山肌に広がり、大きな火の手を上げはじめました。

 

「大変、大変」「どうしよう、どうしよう」「怒られちゃう!」走ってきた伯母は我を失ったようになって、持っていた箒で火を叩いていました。私も鎌でどんどん山の上に行きそうな小さな火を叩いて消しました。

 

でもダメだ、小さな火は消せても、ちょっとでも火が大きくなると、もう熱くて近づけない。大きな火が山肌を伝っていくのがすぐそこに見える。こんなんじゃ全然追いつかないよ、、

 

「どうしよう、どうしよう」伯母が持つ箒に大きな火がつき、それでも伯母は火を叩いていました。「ダメだよ、おばちゃん、箒を捨てて!体に火がついちゃう!」私の言葉は伯母の耳には届いていないようでした。

 

見ると崖の突端のクヌギ周辺にも火が回っていました。私は崖を駆け下りて、クヌギのまわりの火を消しながら、母を呼びました。

 

「母ー!母ーー!!」

 

伯母はパニックになっている。私もどうしたらいいか全くわからない。知恵のある母を呼ばなくては。

 

「母ーーー!!」

 

草刈り機の立てる音は大きくて、母はこちらの声に気付かない様子。

でもこれだけ火が強ければそろそろ気づくかもな…

 

その間も私はクヌギのまわりの火を叩いて消していました。(鎌、何気に叩くと火を消せる。なんで…?)パニックになりながらも、頭の片隅ではそんなことを考えていました。

 

すると、山のふもとから祖父の叫び声が聞こえてきました。こっちの火を消しなぁ!と母に呼びかけているみたい。

 

(えっ、おじいちゃん!?おじいちゃん家の中にいたのに、火の勢いが凄すぎてびっくりして出てきたのかな)

 

すると、草刈り機が止まる音がして、母が駆けてきました。

 

「どうしたの!」

「火がどんどん向こうに行ってるの、どうしよう」

 

母も山の上まで走ってきて、惨状を確認。

 

「消防車呼ぼうか?泣」燃え広がっていく山肌を見ているとき、「山火事のあった現場です!」とヘリから空撮された山の映像がテレビに映し出されるのを思い浮かべていた私は母に聞きました。「呼ぼう、消防車。呼ぼう、ねえお姉さん」呼びかけた先で伯母はまだ身を張って火を消していました。

 

山肌には途中から切り終わっていない草がわんさか生えている。

もしかしたらそこで火の勢いが止まるかも。

 

でも、ものすごい勢いだから…

もしかしたら草の間をぬって山全体を焼いてしまうかもしれない。

 

うちの裏山は小高い山が連山になっていて、「この木までがうちの山」みたいに、すぐ隣は違うお家の山になっています。

 

「呼ぼう、消防車!」

最後は母が判断し、私がたまたま持っていたスマホで119番通報しました。

 

(スマホでも119番繋がるのかな…)と思っていたら数秒の呼び出し音のあとすぐに繋がりました。

 

「はい、〇〇××消防局です(正確に何と言っていたかは忘れた)。火事ですか、救急ですか?」「火事です泣」

 

救急車は呼んだことあるし、これからも呼ぶかもしれないけど、まさか自分が「火事です」と119番通報するなんて…

 

「どこがどれくらい燃えていますか?」

「山で、山肌を火が登っていってます」

 

確か「草を切って、その草を焼こうとして、山に火が回ってしまった」みたいなことを話したと思う。家に燃え移りそうかどうかも聞かれた。

 

そして住所を聞かれ、家主の名前を聞かれたので、祖父の名前を言うと、すぐにどの家かわかったみたいで、「お家に防火用水がありますね?」と言われました。

 

そう、祖父が何十年も前に、家の前に防火用水を作ってもらっていたのでした。

祖父はそこで鯉を飼っていて、私は幼い頃からそれを見ていたし、祖母と一緒にご飯の残りをあげに行っていました。

 

だから私の中では長年「家の前の鯉がいる池」だったんだけど、あるとき母が「防火用水なのに、そこに鯉がいるんだから笑っちゃうよね。もし本当に使うことがあったら、ホースに鯉が詰まるで笑」と言っているのを聞いて、(あれって防火用水だったんだ!)と思ったのでした。

 

消防の人は最後に「町内放送で呼びかけます。おじいさんのお名前で呼びかけますが、よろしいですかね?」と言いました。私、一瞬戸惑う。

 

そんな、大騒ぎになったら…

集落の人たちに知れ渡ったら…祖父母が恥ずかしい思いを

 

…いいえ!

 

山火事になるよりマシなのです!!!😭

 

「お願いします泣」

 

「では、地元消防団と、消防署からも車が行きますので、それまでしばらくお待ちくださいね。怪我をしたら大変なので、消火もほどほどに。危険であればみなさん避難していてくださいね」

 

終始落ち着いた淡々とした声で、でもとても優しさを感じる声で隊員さんはやり取りしてくださり、通話が終了。よし、火を消さねば。

 

その瞬間、ウ〜ウ〜ウ〜〜〜!!!と、消防車が鳴らすような大きなサイレンの音が里山中に鳴り響きました。サイレンに引き続き、火事の場所を知らせるアナウンス。

 

やってしまったのだ。もうこれは火事なのだ。

とにかく、もう火事なのだから、これを少しでも大事にしないように努めるまでなのだ。そう。

 

私は山を駆け下りました。

 

 

長くなったので、ここで一旦アップ。

続きもがんばって書くぞい🙄✊